椎の実


小学校低学年まで過ごしたアパート。

3階建てで2棟建ち。
真ん中には大きな桜の木を中心にした公園を挟み、
裏には駐車場と各戸用の倉庫付き。

我が家の入っている棟は倉庫の後ろが
何反もある田んぼだった。

5月になると一面濃いピンク色のレンゲ畑になって
友だちと走って行って
ばたーんと倒れ込んで人型の跡をつけたり
花冠を作ったり
レンゲの蜜を吸ったり。
寝転がって嗅いだ草のにおいとレンゲの香り
飛んで来るミツバチの羽音、見上げる青空は鮮明に記憶している。

秋になると倉庫の隅っこの方に植わっている
大きな椎の木から落ちる実を拾っては
母にフライパンで炒ってもらって食べていた懐かしいあの味。

地面に落ちるのよりも
その手前で倉庫の屋根に落ちる方が多かったので
フェンスをよじ上り
倉庫の屋根に登ってポケット一杯に詰込んでいた。

あのアパートを離れてからは
椎の実を食べることもなく
見ることもほとんどなくなって。

ところが昨日!
いつもの散歩コースの公園で
どさーっと落ちていた!
というか秋に落ちて誰も拾わないでそのまんま、といった感じ。

銀杏はみんなで拾うらしいけれど
椎の実は人気がないみたい。

この時期に拾って食べても美味しいのかしら。。。
ちょっと迷ったけれど撮影だけ。




生まれ育ったアパートには
数年前に久々に行ってみたけれど
2棟のうち1棟が取り壊されていて
わたしが住んでいた方の棟だけ残っていた。

裏の倉庫も椎の木もそのままだったけれど
こどもが沢山いて常に満室だったあの頃の面影はなく
今は独身者用になっているらしい。

それでも。
子どもの頃に見ていた風景は
やっぱり今でもあの頃のまま。

きっと椎の実も今食べてもあの頃の味じゃないのかもしれないなぁ
裏のレンゲが咲く田んぼはビッチリと住宅街に。

変わることは時にすごく寂しいし、切ない。
特に思い出に浸り過ぎなわたしにとって
良い感じに変わることがあまりない今の時代が切ない。

誰かの心に良い形で残るものが作れたらいいなぁ
それは作品だけじゃなく、
場所であり、考え方のような気もする。

まだそれが何なのか見えないけれど。

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